アパートや賃貸マンションでの家賃不払いが増えています。これには、企業の住宅手当てカット、リストラによる転職が原因の収入減など、最近の経済事情が大きく影響していますが、放置しておくことは大きな経済的損失になりますし、精神的にも大きな負担になるでしょう。速やかにきちんとした対応を取るべきです。
速やかに、かつ何度も行います。
何回も督促していることを文書で残します。
それでもだめなときは、賃料の支払いと(支払いがない場合の)賃貸借契約解除と明渡しを求める内容証明郵便を出します。
そのひな型は、下記のようになります。
催告書
私はあなたに対し、後記記載の貸室を1ヶ月あたり、家賃9万円、共益費1万円の合計10万円で賃貸していますが、あなたは平成○○年5月分から同年7月分までの家賃・共益費合計30万円(1か月10万円)の支払いを遅滞しています。
よって、本書配達後7日以内に上記30万円全額をお支払いいただくよう催告します。万一、お支払いがない場合は、改めて契約解除の通知をすることなく、あなたとの間の上記貸室賃貸借契約は解除されたものとして扱いますのでご了承下さい。
記
埼玉県○○市○○町6丁目5番
家屋番号 ○○番
軽量鉄骨造りスレート葺2階建アパート205号室
床面積 ○○平方メートル
平成○○年8月5日
埼玉県○○市○○町6丁目8番12号
○○アパート205号室
乙川 康夫 様
埼玉県○○市○○町3丁目3番6号
甲野 一郎
一番大事なのは、bの「いつ明け渡してくれるのか」という点です。
通常は、賃貸人が賃借人に与える明渡し猶予期間は1~3ヶ月程度です。賃借人が長期の明渡し猶予期間を主張して譲らない場合は、賃貸人としては、話し合いを打ち切って、速やかに明渡しの訴訟をすべきです。明渡しの訴訟は、それほど時間がかかる手続ではありませんから、その方が解決の早道です。
明渡しの話し合いが成立した場合は、賃貸借契約を解除した上で、明渡し期限を付与するという内容の合意書を作成します。
合意の内容にもよりますが、1つの例が下記の合意書です。
合意書
(甲)甲野 一郎
(乙)乙川 康夫
1 甲と乙は,後記記載の貸室(以下「本件貸室」という)に関する平成○○年4月8日付け建物賃貸借契約を本日合意解除する。
2 甲は乙に対し,平成○○年11月30日まで本件貸室の明渡しを猶予し,乙は甲に対し,同日限り本件貸室を原状に回復して明渡す。
3 乙は甲に対し,本件貸室の未払い賃料として,合計40万円の支払義務あることを認め,このうち20万円を平成○○年10月31日限り支払う。
4 乙が第3項の支払いを遅滞なく行い,また,第2項の明渡しを期限までに行ったときは,甲は乙に対し,未払い賃料の残額である20万円の支払義務を免除する。
5 乙は甲に対し,第2項の明渡し日まで1ヶ月金○○万円の割合による賃料相当の使用損害金を支払う。
6 第2項の明渡し期日後,乙が本件貸室内に残置した動産については,乙はその所有権を放棄し,甲が自由に処分することを乙は異議なく承諾する。ただし,処分費用は乙の負担とする。
記
埼玉県○○市○○町6丁目5番
家屋番号 ○○番
軽量鉄骨造りスレート葺2階建アパート205号室
床面積 ○○平方メートル
平成○○年9月15日
(甲)埼玉県○○市○○町3丁目3番6号
甲野 一郎 印
(乙)埼玉県○○市○○町6丁目8番12号
○○アパート205号室
乙川 康夫 印
合意書を作成しても本当に期限までに明渡してくれるのか不安なときは、簡易裁判所に即決和解の申立をします。明渡しまでの期限が、3ヶ月を超えているかどうかが一つの目安で、4ヶ月、5ヶ月というような長期の明渡し猶予期間を取り決めたときは、即決和解の申立をした方がよいでしょう。
この手続は、賃貸人と、賃料不払いをしている賃借人とが簡易裁判所に行き、裁判官の前で事情を言って和解調書をいう書類を作成してもらうものです。この書類があれば、約束の期限に明け渡してくれないときに、すぐに明渡しの強制執行ができます。
※即決和解の申立書作成、裁判所での即決和解手続を弁護士に依頼した場合、費用は10万円~20万円程度です。
なお、公正証書では明渡しの強制執行ができませんから、明渡しの場合は公正証書を作成すべきではありません。
実力行使は、「法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる、緊急やむをえない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲で、例外的に許される」(判例)とされています。
アパートや賃貸マンションの明け渡しでは、実力行使はほとんど認められませんから、法的な手続を経ないまま、賃借人の家財道具などを運び出したり、鍵を変えたりすることは、しない方が無難です。
このことはたとえば、「賃借人が賃借料の支払を5日以上怠ったときは、賃貸人は、直ちに賃貸物件の施錠をすることができる。また、その後5日以上経過したときは、その賃貸物件内にある動産を賃借人の費用負担において賃貸人が自由に処分しても、賃借人は、異議の申立をしないものとする」というような特約がある場合でも同じです。
※このような特約は、公序良俗に反し、無効とされています(判例)。
ただし、賃借人が出て行ってしまい、部屋の中にはほとんど何も残っておらず、残っているものは、賃借人が捨てていったものであることが明らかだという場合は、写真を撮ったり、わずかに部屋の中にある物のリストを作ったりした上で、物を運び出したり、鍵を代えたりしてかまいません。
賃借人の賃料不払いを理由として貸室明渡しの訴訟を起こした場合、明け渡せという判決をもらっても、その判決によって明渡しの強制執行ができるのは、賃借人とその家族(配偶者や子)に対してだけです。
そうすると、明渡しを求める訴訟をしている間に、第三者が貸室に入り込んでしまった場合、賃借人に対してアパートの明渡しを命じる判決が出ても、その第三者に対しては明渡しの強制執行ができず、さらに、その第三者を相手方にして、明渡しの訴訟を起こさなければならないということになってしまいます。
このようなことにならないために、将来、アパートに第三者が居住する恐れがあるという場合は、占有移転禁止仮処分という手続を取った上で、アパートの明渡しを求める訴訟をします(その恐れがあまりない場合は、いきなり訴訟をします)。
具体的な手続ですが、賃貸人代理人である弁護士が、裁判所に占有移転禁止仮処分を申立てると、保証金を賃貸人に積ませた上で(この保証金は将来返ってきます)裁判官が仮処分決定を出します。
仮処分決定が出ると、次に、この決定をもとにして、仮処分の執行をします。具体的には、弁護士が、仮処分決定書を裁判所の執行官に提出し、執行官と弁護士が賃借人の貸室に行きます。そして、貸室に入り、貸室の壁に、「今後、賃借人は第三者に占有を移転してはならない」という趣旨のことを書いた『公示書』を貼ります。
この公示書があると、将来、アパートに第三者が入り込んでも、その第三者に対して、さらに訴訟をする必要がなくなるのです。
「一定の明渡し猶予期間をおいた上で、アパートを明け渡す」という内容の和解ができないか、裁判官が、賃貸人、賃借人双方に打診します。
和解ができれば、いついつまでに明け渡すという内容の和解調書を作成します。和解の話し合いがまとまらなかった場合は、明渡しを認める判決が出ます。
※和解をするのは、和解のとおりに賃借人が明渡しをしてくれることを期待するからです。判決ですと、多くの場合、明渡しの強制執行をしなければならず、そのための費用がかかります。
和解調書、判決などによって、明渡しの強制執行をすることができます。
まず、地方裁判所の執行官に対して、明渡しの強制執行申立をします。
その後、執行官が現場に行って、賃料不払いをしている賃借人に対し、明け渡すよう催告し、それでも明渡しをしない場合は、執行官立会いのもとに明渡しの強制執行を行います。
強制執行では、何人かの人夫(執行補助者といいます)を使い、家財道具などの運び出しを強制的に行い、鍵も変えてしまいます。
ただ、執行補助者の日当、トラック代、ダンボール箱代、賃借人の家財道具などの捨て代、などは賃貸人の負担になり、部屋の広さなどにもよりますが、通常のアパートの場合、30~40万円前後の費用がかかります。
賃料不払いによる建物明渡し事件は、賃貸人がほとんど100%勝訴します。訴訟も、1~2回位で審理が終わり、次に判決になります。
一般的に言うと、賃料不払いを理由にしてアパートの明渡しを求める場合は、弁護士に相談してから、最終的に、和解あるいは強制執行によって、建物明渡しが終了するまで、4~5ヶ月程度です。
即決和解をするのであれば、即決和解手続を依頼するのが通常です。
占有移転禁止仮処分をするのであれば、
を依頼し、占有移転禁止仮処分をしないのであれば、
を依頼します。
一人でお悩みの方、私たちがお力になります。
※土曜・日曜・ナイター相談はさいたま本部で行なっています。
私たちがお力になります!