被相続人が死亡すると、その遺産を相続人間で分けるために遺産の分割をしなければなりません。そのやり方は、遺言書がある場合とない場合とで、次のように違ってきます。
遺言書の中で遺言執行者として指名された者が、遺言に書かれている内容を実現します。
※私文書遺言の場合は、遺言書を家庭裁判所に提出して、検認という手続を受けなければなりません。公正証書遺言の場合は、この手続は必要ありません。
遺言者が亡くなったことは当然分かりますから、これによって遺言執行が開始します。
公正証書遺言を作成した際の証人、実際上、遺言書の作成に関与した親族などは、速やかに、遺言者が亡くなった旨を遺言執行者に連絡してください。
また、遺言執行者になった第三者は、定期的に遺言者に手紙を出し、遺言者の安否を確認して必要があります。
遺言者の財産管理をしている者から、次のものを預かります。
最新の登記簿謄本を法務局から取り寄せて、権利関係を確認します。
遺言執行者は「遅滞なく」遺言の対象となっている財産について、財産目録を作成し、相続人に渡さなければなりません。
司法書士に依頼して名義を移転します。
遺言執行者が払い戻しをして、遺言でその預貯金を取得するとされている者に対して、支払を行います。
名義書き換えを行ないます。
中身を点検し、遺言にしたがって相続人に引き渡します。
遺言書に記載されている不動産が第三者に不法に占有されている、第三者の不法な登記がある、あるいは、遺言書に記載されている債権につき、債務者である第三者が支払いをしない、などの事情があるときは、遺言執行者は不法占有者などを相手に、調停、仮処分、訴訟などの法的措置をとります。
遺言執行者が弁護士でない場合は、弁護士に依頼してこのような手続をとります。
遺言書に記載がある場合、次の費用については、遺言者の財産から支払をします。
遺言執行が完了したら、遺言執行者は受遺者と相続人に対し、執行が完了した旨を報告します。
報告は、報告書を添付して行います。
遺言中に遺言執行者が定められていない場合は、相続人全員で遺言の内容を実現します。
相続人の中に、遺言の実現に協力しない者がいるときは、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立て、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことになります。
遺言書がない場合は、相続人全員で話し合って、誰が何をもらうということを決めなければなりません。
これを遺産分割協議といいます。
話し合いをするのは、被相続人の四十九日が済んでからが一般的です。
次のような場合は、実家の長男の方と他の相続人との間で、紛争が生じがちです。
ですから、被相続人の遺産のすべてを他の相続人に明確にして下さい。そうでないと、「遺産の全体が分からないのに、遺産分割の話しなんかできない」というような意見が、他の相続人から出かねません。
また、ある程度の物は、他の相続人にもあげる覚悟をして下さい。
さらに、遺産分割協議に臨む態度は、誠実でなければなりません。
話し合いは、相続人に集まってもらい、ある程度時間をかけて行います。1回で終わらない場合は、何回か行う必要があります。
相続人の中に、何が何でも法定相続分をもらいたいという人がいる場合は、仕方ないのですが、遺産分割に関する紛争を見ていると、本来は起きなくてもよい紛争が、実家の長男の方の対応のまずさから起きている場合も非常に多いように感じられます。
日頃から実家の税務面を見てもらっている税理士などがいる場合は、専門知識を補充するという観点から、その税理士の方に、遺産分割協議の場に同席してもらうとよいでしょう。
また、遺産の評価、分け方、あるいは特別受益など、話しが専門的になる場合も、税理士、弁護士、相続に詳しいコンサルタントなどの同席を求めるとよいでしょう。
話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。そこには、誰が何を取るということが記載され、各相続人が実印を押印し、各相続人の印鑑証明書を添付します。
その後は、不動産であれば司法書士に相続による所有権移転登記を依頼し、相続人全員の実印を押した委任状や印鑑証明書を預けます。
預貯金の場合は、銀行などから払い戻しに必要な書類をもらい、それに相続人全員の実印を押し、印鑑証明書を添付します。
株式の場合は、その株式を発行している会社や証券会社から、名義変更に必要な書類をもらい、相続人全員の実印を押し、印鑑証明書を添付します。ゴルフ会員権の場合も、その会員権を発行しているゴルフ場運営会社から名義変更に必要な書類をもらい、相続人全員の実印を押し、印鑑証明書を添付します。
遺産分割協議書のひな形は後記のとおりです。
不幸にして遺産分割協議がまとまらない場合は、相続人の一人あるいは複数の相続人から、他の相続人を相手にして、家庭裁判所に遺産分割調停の申立をすることになります。
調停では、遺産に属する財産は何か、遺産の評価、分け方、特別受益、特別の寄与の有無など、様々な問題が出てきます。
調停は1ヶ月に1回のペースで、話し合いが成立するか、あるいは話し合いが成立する見込みがないという段階になるまで行われますが、その期間の長短は様々です。
調停が成立した場合は、調停調書という書類が作成され、その書類によって、不動産の所有権移転登記などを行います。
調停が成立しない場合は、家庭裁判所での審判に移行します。審判というのは、裁判官が、様々な事情を考慮の上、裁判官の判断で遺産を分ける手続です。
審判決定が出た場合は、審判書という書類が作成され、その書類によって、不動産の所有権移転登記などを行います。
遺産分割協議書
平成○○年○月○日、鈴木正道の死亡により、共同相続人である鈴木園子、鈴木道久、鈴木正二、中村恵子、鈴木正道の遺産を下記のとおり分割することに合意する。
1 相続人である妻鈴木園子は下記の遺産を取得する。
| (自宅) | ||
|---|---|---|
| ① | 所在 | 埼玉県□□市△△町三丁目 |
| 地番 | 1381番 | |
| 地目 | 宅地 | |
| 地積 | 2022平方メートル | |
| ② | 所在 | 埼玉県□□市△△町三丁目一三八一番地 |
| 家屋番号 | 1381番 | |
| 種類 | 居宅 | |
| 構造 | 木造スレート葺二階建 | |
| 床面積 | 1階 167・58平方メートル 2階 115・54平方メートル |
|
| (預金) |
|---|
| 東西信用金庫××支店に対する定期預金、定期積金(口座番号9873456) |
2 相続人である長男鈴木道久は下記の遺産を取得する。
| (田畑) | ||
|---|---|---|
| ① | 所在 | 埼玉県□□市△△町3丁目 |
| 地番 | 2012番 | |
| 地目 | 田 | |
| 地積 | 508平方メートル | |
| ② | 所在 | 埼玉県□□市△△町3丁目 |
| 地番 | 2013番 | |
| 地目 | 田 | |
| 地積 | 302平方メートル | |
| (預金) |
|---|
| 南川銀行××支店に対する定期預金、定期積金(口座番号3768754) |
3 相続人である次男鈴木正二は下記の遺産を取得する。
| (土地) | |
|---|---|
| 所在 | 埼玉県□□市△△町5丁目 |
| 地番 | 328番 |
| 地目 | 宅地 |
| 地積 | 495・87平方メートル |
4 相続人である長女中村恵子は下記の遺産を取得する。
| (預金) |
|---|
| 南北信用金庫××支店に対する定期積金(口座番号2354678) 以上のとおり、遺産分割協議が真正に成立したことを証するため、この遺産分割協議4通を作成して署名押印し、各自1通づつを保管する。 |
平成○○年○月○日
埼玉県□□市△△町3丁目1381番地
相続人(亡鈴木正道の妻) 鈴木 園子 印
埼玉県××市△△町5丁目6番2号
相続人(亡鈴木正道の長男) 鈴木 道久 印
埼玉県□□市△△町2丁目5番3号
相続人(亡鈴木正道の次男) 鈴木 正二 印
埼玉県××市□□町3丁目7番3号
相続人(亡鈴木正道の長女) 中村 恵子 印
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